ま、日本の地下鉄ですから、構内にはきちんとした地図があり、大きなランドマークならば、すぐに場所も最適の出口もわかるようになっています。
言葉もわからぬモスクワの地下鉄をひとりで乗り切ったんだから、東京なんか楽勝よ、楽勝。根拠のあまりない自信に支えられて、若者の街渋谷にひとりで乗り込みました。
で、お陰様で、地下鉄構内の地図と、街に貼られた展覧会のポスターで、渋谷の文化村には、さしたる苦労もなく行き着きました。文化村、入るのは初めてですが、なかなか面白そう。次回はゆっくりと回ってみたいです。
トレチャコフもそうでしたが、展覧会はもちろん撮影禁止。例によって入口だけは許可をもらって撮影しました。
ロシア美術は、独特のリアリズムに支えられていて、とにかく精緻で、無骨なまでにリアリスティックな絵が多いです。日本の空白部分に想像の余地を残す文化とは対照的。
その中で、ちょっと異彩を放つのがこの「忘れえぬ女(ひと)」。精緻に描かれた女性と、後ろの雪にけぶるサンクトペテルブルグの街並の対比が美しいです。
黒い豪奢な衣装に身を包み、矜持に支えられたきつい目とあだな色香。
そしてその美女の目にうかぶうっすらとした涙。
物語を想像させるこの絵のモデルは不明だそうですが、人はみなあれこれと詮索したくなる。
実は絵の題名を直訳するとただの「見知らぬ女」だそう。でも、それを「忘れえぬ女(ひと)」と訳した人の感性の素晴らしさに舌を巻きます。
なにしろ、私もトレチャコフで見て一番感銘を受けた絵だったのです。まさしく「忘れぬ一枚」ですね。トレチャコフでは、ガイドさんに連れられてだったのでゆっくり見ることができなかったので、この思わぬ日本での再会は嬉しかったです。
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