丁度企画展で、「大津国宝への旅」をやってました。開館20周年の大企画展ですから、なんだか今度の旅行はものすごくラッキー。
国宝35点、重要文化財55点、の大津の名宝勢揃い、ってことですから。それにしてもさすが関西、京都や奈良のお隣。歴史的、文化的な宝物が多いなぁ。
そういう名宝揃いの企画展でしたが、そのインパクトにおいて圧倒されたのが聖衆来迎寺が持つ、絹本著色六道絵13幅!
ブリューゲルの「地獄絵」を見に京都に来たというのに、なんてシンクロニティ。同じ旅行の間に、日本中世の「地獄絵」を見ることができるとは…。
源信の「往生要集」に題をとった絵解きの地獄絵は、地獄のガイドブックとも言うべき内容。
私もさすがに原文は読んだことがないのですが、梅原猛の「地獄の思想」という本の中で紹介されているので内容は知っていました。
その本の中で、梅原猛は源信の説明する「地獄」とは「現世」の象徴そのものである、と。
その言葉を頭に、六道絵を見ると、様式化された炎が、人間の心を焼く貪欲、
瞋恚、痴の炎に見えてきます。もちろん、絵師がそう意図して描いたかどうかまではわかりませんが…。
そしてその炎は、奈良の博物館や、三井寺で目を惹いた明王の背負う炎とも重なります。
日本画や日本の仏像における炎の様式的表現は、なんて魅力的なんだろう。様式的でありながら、ダイナミックで。
また人道九不浄相之図における死体のグロテスクな表現もすさまじかったです。どんな肉体も死んでしまえば不浄のものとなり果てるとの諦観。間近にある「死」を、観察力鋭く絵にしたもの。西洋風にいえばのメメントモリですね。
残念ながら、荷物を増やせないので図録はあきらめて帰りましたが、六道絵の魅力にすっかりとりつかれてしまいました。そこで、自宅に帰ってからこの本を購入。
企画展を見た後は、食事をして、常設展に移動しました。歴史の古い街だけあって、展示は大変充実しています。
蓮如の肖像など、一向宗絡みの展示がたくさんあるのに比して、安土城があるにしては織田信長についてはさらっと触れられるのみ…。
どうしてだろうと考えたら、大津は比叡山のお膝元。そりゃ、仏敵信長だものね。
それはともかく、目をひいたのが二階と一階とにまたがって展示されている近江八景の模型です。
上の階には、琵琶湖を中心とした古地図を。
そして下の階には、その模型。それぞれの場所をボタンで光らせることが出来るヤツね。
それにあわせて、近江八景の浮世絵が表示されるという仕組みです。うん、大がかりで大変楽しかった。
後、近江京の模型もありました。
壬申の乱であえなく消えた琵琶湖のほとりの幻の都の再現です。
もし、壬申の乱で大友皇子が勝っていたら…、幻の都は、琵琶湖の水運を利用し、長く栄えたのかもしれません。
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