展覧会の会場は、京都駅の伊勢丹7Fの美術館「えき」KYOTOです。
こんなところに美術館があるとは知りませんでした。といっても、百貨店の催し物との連動の企画展のみで、所蔵の美術品はないようでした。京都駅内なので便利です。
会場内もなかなか凝っていて、柱にはブリューゲルの版画を飛び出した愛らしい化け物たちの絵が。しかも、方向によってカタチが違い、まるでアニメーションしているかのように。写真ではあまりきれいにとれてません。
その他にも、スタンプを押す場所でも案内してくれるのはブリューゲル風化け物。
記念に押してね!って(萌)
ブリューゲルは地獄の怖ろしい魔物として描いたはずなんだけど、かわいいったらありゃしない。
こちらは、京都駅の構内、近鉄に向かう道。ものすごい数の「聖アントニウスの誘惑」が並んでいるのは、ちょっと壮観でした。ポスターにもなっているこの絵は、ブリューゲルの版画の中でも、最もインパクトの強いもののひとつです。
さて、肝腎の展覧会の感想です。
ヒロニムス・ボスに大きく影響を受けた宗教版画の数々。その一つ一つはシンボル性に満ちていて、解説とあわせて見ていくと、ものすごく目が疲れました。
もちろん、好きなのは「7つの罪源」シリーズ。画面に踊る愛嬌にあふれた化け物たち。ブリューゲルは宗教的な見地から見るもおぞましき化け物として描いたのかもしれませんが、時代や場所の違うところから見れば、その一つ一つの個性が楽しくて。モノクロ精密銅版画好きにはごちそうごちそう。
一方、楽しい化け物があまりいないので、見落とされがちな七つの徳目シリーズも、別の観点から見るとなかなかに興味深いです。現在とは道徳律の違う時代の「徳目」なので、近代的価値観からすれば、とんでもなかったりして。「正義」と名付けられた裁判の風景では、しっかり拷問やってます。一瞬、皮肉で描いていんじゃないかと思いました。でも、科学捜査のない当時は拷問による自供がすべてだったんだろうなぁ。
絵として見た場合、さすがにボスのほうに軍配があがると思うし、ブリューゲル自体としても、後の大作絵画に比較すると、少々わかりやすさに流れてる部分もありますが…。まあ、他の作家の版画と比較すれば、明らかに溢れんばかりの才を感じてしまいます。面白かった。
珍しく絵はがきなんぞも買って、うきうきと会場を後にしました。うーん、満足。
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